WHO SAYS IT, AND WHAT WE EXPECT
論考 · 約8分
同じセリフなのに、あの人が言うと面白いのはなぜ?
同じ一言が、誰の口から出るかで別の意味になる。人物像の作り方、帰属の効果、匿名の一答で何を書き足すかを考えます。
セリフより先に、人物についての予想がある
説明用の創作例
ここまでは、すべて計算どおりです。
綿密に準備してきたリーダーが言うと、頼もしい報告に聞こえるかもしれません。いつも計画を立てずに動く人が、偶然の成功のあとに言うと、強がりに聞こえるかもしれません。
文字は同じです。違うのは、その人について先に知っていたことと、直前まで見ていた出来事です。笑いを言葉だけから考えると、この部分を取り落とすことがあります。 同じ一言を、三人に言わせてみます。
| 先に共有した人物像 | セリフが置かれる場面 | 生まれ得る読み方 |
|---|---|---|
| すべてを予定表に書く人 | 予期しない停電の直後 | 予定外を認めたくない強がり |
| いつも行き当たりばったりの人 | 偶然うまくいった直後 | 成功を自分の手柄にする後づけ |
| 初めて責任者になった人 | 小さな準備が一つ終わったところ | 必死に落ち着いて見せる背伸び |
どれも必ず笑えるわけではありません。ただ、同じ言葉でも、矛盾するものが違うことは見えます。 第一の人物では「完璧な計画と想定外」、第二では「無計画と計算」、第三では「不安と落ち着いた口調」が重なります。
ここでの人物像は、性格を丸ごと説明する履歴書ではありません。今回のセリフを読むために必要な、一つか二つの手がかりです。
名前を添えるだけで、評価が変わることはある
JohnsonとMistry(2013)は、同じジョークを、著名なコメディアンまたはそれ以外の著名人が言ったものとして提示する実験を行いました。 コメディアンに帰属させた条件で面白さの評定が高まる結果が得られ、名前が見えることなどの条件も検討されています。
この研究が示すのは、帰属先の情報が評価に影響し得ることです。有名なら何を言っても面白い、無名なら面白くできない、という結論ではありません。 短いジョークの評定と、ライブで積み上げる人物像も同一ではありません。
それでも、言葉を読む前から「この人は面白いことを言うはずだ」という構えが生まれる可能性は、考えておきたいところです。表現そのものの働きと、話し手への期待を完全に切り離すのは簡単ではありません。
キャラクターは、説明より選択に現れる
架空の人物を「几帳面な人です」と紹介する方法もあります。別の方法として、行動を一つ見せられます。
紹介の代わりに置く一場面
机の上には、定規をしまう位置を示す線が引いてある。
この人物が、「今日は思いきって自由にやります」と言い、自由に使う時間をストップウォッチで測り始める。最初の行動を知っていると、次の行動を同じ人物の癖として読めます。
ここで面白さを考える軸は、派手な属性を何個つけたかではありません。その人が何を優先し、何を譲らないかです。 効率、礼儀、見栄、節約、他人への気配り。普段なら役立つ価値が、別の場面でも曲がらずに出てくると、人物の可笑しさを描けます。
創作上の提案です。「几帳面な人は笑われやすい」という心理学的な診断ではありません。
「意外な一面」と「別人になった」を分ける
誰のことも役職名で呼ぶ人物が、ぬいぐるみにも「くま部長」と呼びかける。相手はおかしくなっても、扱い方は変わっていない。
相手が変わっても、上下関係を立てる癖は続いている厳しかった人物が、説明なく何でも許すようになる。意外さよりも、人物の連続性が失われたと感じる読者もいる。
何が続いているのかを、読み手がつかめない違いを点検するには、行動を変えても残っている価値を探します。呼び方の例なら、相手がぬいぐるみに変わっても「序列を確かめてから話す」という癖は残っています。 「節約家が豪華な祝いをする」なら、節約より優先するものが初めて見えたのかもしれません。
ギャップは、反対の属性を足せば自動で生まれるものではありません。何が続き、何が新しく見えたかを読み手がつかめるかが、作るときの問いになります。
小さな失敗で、必ず親しみが増すわけではない
「完璧な人が失敗すると親しみが湧く」という説明を聞くことがあります。Aronsonら(1966)の古典的な実験では、優秀と提示された人物の失敗は対人的魅力を高める一方、平均的と提示された人物では同じ方向になりませんでした。
ここで測られたのは魅力の評価で、ジョークの面白さではありません。したがって「隙を見せれば笑いが取れる」という技法の証明にはできません。
むしろ、同じ失敗でも、それまでの人物の見え方によって受け取られ方が変わるという、限定された参考になります。創作でも、小さな失敗を置く前に、読者がその人物に何を期待しているかを考えます。
匿名の一答では、何を言葉に入れるか
長い物語なら、人物像を複数の場面で育てられます。しかし、単独で表示される大喜利回答では、作者の普段のキャラクターを知らない読者もいます。その場合は、回答の中に必要な手がかりを入れます。
几帳面すぎる人が自由にする
人物の紹介で終わり、読み手が比べる材料がない自由時間の使い方を、方眼紙に書いている
「自由」と「きっちり管理する行動」を一文の中で比べられる長い人物紹介をしなくても、今回必要な癖を置けるわけです。
練習として、同じセリフを三人の架空人物に言わせてみます。次に、人物紹介を消して、動作か持ち物を一つだけ残します。 それでも違う人として読めるか。今回の面白さに本当に必要だった人物情報は何か。その差を見てみます。
参考文献
- Andrew J. Johnson & Kamleshwari Mistry, “The effect of joke-origin-induced expectancy on cognitive humor” (2013), DOI
- Elliot Aronson, Ben Willerman & Joanne Floyd, “The effect of a pratfall on increasing interpersonal attractiveness” (1966), DOI
後者が測定したのは人物への魅力であり、面白さではありません。本記事の人物像の作り方は、そこから着想した創作上の提案です。