OGIRI: PROMPT DESIGN AND IDEATION
論考 · 約11分
大喜利のお題設計と、6つの発想エンジン
大喜利のお題(フリ)がどう聞き手の予測を固定するかを型に分け、そこから答えを引き出す6つの発想の動かし方を、創作例とともに見ていきます。
お題は、聞き手の予測をあらかじめ固定する装置
大喜利は、無から面白い一言を思いつく遊びではありません。お題(フリ)がまず聞き手の中に「普通ならこうなる」という予測を作り、 回答者はそこから外れつつも筋の通る答えを返します。予測が強く固定されるほど、そこからのズレは大きく感じられます。
お題の5つの型
反転・忌避型——理想やタブーを逆転させる
「こんな○○は嫌だ」のように、常識や理想をひっくり返す型です。攻略のコツは、問題の焦点を本質(味・暴力など)から周辺(システム・心理・手続き)へずらすこと。 「こんなラーメン屋は嫌だ」なら、味が不味いという直線的な答えより、「店主の自尊心が異常に低い」のように、事象の外側にある心理を持ち込むと落差が生まれます。
属性衝突型——相容れない2つを結合させる
互いに馴染まない属性を掛け合わせる型です。「教育熱心すぎるヤクザ」なら、暴力そのものではなく、「指をつめる代わりに漢字ドリルを増やす」のように、2つの属性が交差する不条理な接点を探します。
文脈補完型——画面の外の因果を捏造する
一場面の写真やセリフから、その前後を作らせる型です。「大泣きしている赤ちゃんの写真」なら、 お腹が空いたという範囲にとどまらず、「前世の株式投資の失敗を思い出している」のように、時間軸の外にある理由を提示します。
条件絞り込み型——変数を極限まで絞る
状況・時間・人物を強く限定する型です。「深夜2時の校長室」なら、舞台装置をそのまま活かし、「金庫の前で『0001…違う、0002…違う』と呟いている」のように、圧倒的に解像度の高いディテールで刺します。
概念再定義型——言葉の定義そのものを言い換える
抽象概念を、別の言葉を使わずに表現させる型です。「『絶望』という言葉を使わずに絶望を表現してください」なら、 辞書的な意味を離れ、「スマホの充電が1%で『アップデートを開始します』」のように、あるある感を込めた新しい意味付けを行います。
制約の強さと、必要な飛躍の大きさ
条件絞り込み型など
聞き手の脳内イメージがすでに強く固定されているため、わずかなズレでも大きな落差を生み出しやすくなります。
反転型・概念再定義型など
聞き手の思考の範囲が広い分、並の答えでは予測の内側に収まってしまい、より遠くへ跳ぶ意外性が求められます。
同じ「面白い答え」でも、必要な飛躍の量はお題の制約次第で変わります。型を当てはめる前に、まずそのお題がどれだけ聞き手の予測を絞り込んでいるかを見極めることが、遠回りに見えて近道です。
答えを引き出す、6つの視点の動かし方
型がお題の分類だとすれば、ここからは答えを組み立てる側の操作です。直感に頼る前に、お題の要素をいったん分解し、次のどれかの視点で変換してみると、案が出やすくなります。
領域の移動——物理から手続き・心理へ
問題が起きている領域を、物理的な危険から社会通念や制度へ移します。「危険な遊園地」なら、器具が壊れそうという物理面ではなく、「観覧車の1箱ごとに消費者金融の契約ブースが入っている」のように手続きの領域に置き換えます。
スケール変換——規模・時間・重さを極端にする
事象の大きさを縮小または拡大します。「スケールの小さい事件」なら、「近所のノラ猫が『俺のなわばり』の登記簿を持ってきた」のように、深刻な語彙を極小の主体に割り当てます。
過剰な論理——異常な前提を大真面目に処理する
前提が異常でも、そこに徹底的に生真面目な論理を適用します。「デスゲームの主催者が言いそうなこと」なら、「えー、インボイス制度の導入に伴い、領収書の形式が変わります」のように、事務的な正確さで押し通します。
視点の流転——当事者ではなく周辺から見る
主役ではなく、巻き込まれた第三者やシステムの管理者の視点に立ちます。「ヒーローと怪獣の戦い」なら、「壊されたビルの警備会社の緊急コールセンターの音声」のように、脇にいる存在の目線に切り替えます。
時代・文化の移植——現代の仕組みを異なる世界観へ
サブスクやSNS、コンプライアンスといった現代的な仕組みを、歴史的・架空の世界に持ち込みます。「戦国時代のツイッター」なら、「織田信長が『本能寺なう』と打った後、通信障害が起きている」のように組み合わせます。
ベタの通過点——予測どおりの先へ進む
予測どおりの答え(ベタ)をそのまま出すのではなく、その先にある後日談やメタ的な構造まで踏み込みます。ベタを経由点として扱うことで、聞き手はいったん予測が当たったと感じたあとに、もう一段ずらされます。
型もエンジンも、採点表ではない
実際に評価の高い答えの多くは、複数の型やエンジンにまたがっています。上の整理は、思いつかないときに視点を変えるための足がかりであり、 すべての面白い答えがどれかに分類できると主張するものではありません。
また、ここで挙げた具体例はいずれも本記事のための創作です。同じお題でも、場の空気や直前に出た答え次第で、望ましい飛躍の大きさは変わります。 その振れ幅については、次の記事で「意外性」と「納得感」の関係として扱います。