FROM ONE RESULT TO ONE CHANGE
実践 · 約9分
自信作が伸びなかったら——大喜利の振り返り方
自信作が0票でも、確かめられたのは票がつかなかったことだけ。結果と解釈を分けて書き、次の一回で試す変更を一つに絞る手順です。
まず、結果と解釈を別の欄に書く
自分では会心の一答だったのに、票がつかなかった。反対に、軽く書いた答えが評価された。どちらも、理由がわからないままだと、次に何を変えればよいのか迷います。
「もっと面白くする」では、明日の作業が決まりません。そこで、振り返りの終点を小さくします。次の回答で試すことを、一つだけ決める。それがこの記事の目標です。
創作の回答/お題「こんなホテルは落ち着かない」
チェックアウトの時間が近づくと、部屋の中のいろいろな家具や備品が、お客さんに早く帰ってほしい感じを出してくる。
結果が0票だった場合、確かめられるのは「集計時点で票がついていない」ということです。「文章が長かった」「発想が弱かった」「誰も読んでいない」は、いずれもまだ仮説です。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 狙い | 無言の家具から退室を急かされる居心地の悪さ |
| 確認できた結果 | 集計時点では0票 |
| 原因の候補 | 動作が曖昧/長い/好みに合わない/読まれ方が不明 |
| 追加で確かめたいこと | 読んだ人に、どんな場面が浮かんだか聞く |
この段階では、原因の候補を一つに決めません。自分の作業で確かめやすいものから選びます。
抽象的な反省を、変更できる場所へ戻す
先ほどの答えなら、まず動作を一つに絞れます。
修正版
チェックアウト10分前、ベッドが先に畳まれる。
もとの「帰ってほしい感じ」が、目に見える動作になりました。ただし、この修正には、短文化、具体化、主体の絞り込みという複数の変更が入っています。 修正版が好評でも、何が効いたかを一つに決めることはできません。変更の違いを見たいなら、もう少し条件を近づけます。
| 比べたいこと | 案A | 案B |
|---|---|---|
| 時間の具体性 | チェックアウト前、ベッドが先に畳まれる | チェックアウト10分前、ベッドが先に畳まれる |
| 表現の形 | チェックアウト10分前、ベッドが先に畳まれる | チェックアウト10分前、ベッド「お先に畳まれます」 |
一行目は時間表現だけ、二行目は描写かセリフかだけを動かしています。言葉を一つ変えれば語調も字数も動くので、厳密に同一条件にはできません。 それでも、時間と動作をそろえておけば、比べているものを「主に表現の形」と言えます。
どちらが上かを決めるだけでなく、受け手に何が伝わったかを聞きます。「10分前が切迫感を作った」「セリフだと家具の人物像が浮かんだ」など、作業に戻せる感想を集めます。
フィードバックは、点数だけではない
HattieとTimperley(2007)は、学習におけるフィードバックを整理し、その働きは内容や与え方によって異なり、常にプラスになるわけではないと論じています。
大喜利でも、「面白い」「つまらない」という結論だけでは、何を変えるかがわかりにくい。試読してもらうなら、答えを誘導しない聞き方を用意します。
- どんな場面が浮かんだ?
- 途中で読み返したところはあった?
- いちばん印象に残った言葉は?
「最後の一語が面白かったでしょ?」と聞くと、確かめたいことを自分で教えてしまいます。まず相手の読み方を聞き、そのあとに狙いと比べます。笑えなかった人へ、笑うまで解説を続ける必要もありません。
少人数の感想は、読まれ方を知るための情報です。それを、そのまま全投票者の反応だと扱わないことも大切です。
ウケた答えも、同じ手順で見る
失敗作だけを振り返ると、「悪いところ探し」が習慣になりがちです。票がついた答えにも同じ表を使ってみます。
何を狙い、どんな反応があり、次にも残したいところはどこか。高得票だった固有名詞を繰り返すより、その言葉が担っていた仕事を見る。 具体的な絵を作ったのか、立場を反転させたのか、共有経験を呼び起こしたのかを考えます。
他人の回答を読むときも、表面の言葉を借りる前に、働きを自分の言葉で書きます。そして、題材も登場人物も違うお題で、その働きだけを試してみる。 似た文を再生産することと、表現の仕組みを学ぶことを分けられます。
五分で終える、小さな振り返り
TannenbaumとCerasoli(2013)は、個人・チームの活動後の振り返りに関する研究をメタ分析し、適切に行われた振り返りが成績の改善に結びつくことを報告しました。 ただし対象は訓練や業務など多様な課題で、大喜利専用の研究ではありません。
| 時間の目安 | すること |
|---|---|
| 1分目 | 一回答だけ選び、狙いを書く |
| 2分目 | 確認できた反応を、解釈抜きで書く |
| 3分目 | 原因の候補を二つ挙げる |
| 4分目 | 試せる変更を一つ選ぶ |
| 5分目 | 別案を書き、次回確かめたい点を残す |
反省を長く続けすぎないための目安です。五分が最適だとする研究結果ではありません。
考えても情報が増えない場合は、「原因不明」で終えてかまいません。原因を無理に確定するより、次に確かめられる形にしておくほうが役に立ちます。
コピーして使える記録欄
- お題・自分の回答
- 狙った面白さ
- 読み手に必要だった前提
- 確認できた反応と確認時点
- 原因の候補と、まだわからないこと
- 次に一つだけ変えること
- 修正版・次回試す案
票数が毎回上がることを、練習の唯一の成功条件にする必要はありません。狙いを短く言えた、別案を作れた、読み手の解釈を一つ知った。 その記録も残しておけば、後から自分の試行錯誤を読み返せます。
参考文献
- John Hattie & Helen Timperley, “The Power of Feedback” (2007), DOI
- Scott I. Tannenbaum & Christopher P. Cerasoli, “Do Team and Individual Debriefs Enhance Performance? A Meta-Analysis” (2013), DOI
いずれも教育・訓練の場を対象にした研究です。本記事の記録欄と質問文は、そこから着想した実践上の提案で、得票向上率に換算できるものではありません。