OIU 分析ダッシュボード

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UNDERSTANDING IS NOT LIKING

論考 · 約8分

自分は爆笑、隣は無反応——笑いの好みはどこで分かれるか

「わかるけど笑えない」はどこで起きるのか。理解、好み、表に出る反応を分け、共有知識と場の条件が評価に混ざるところまで見ます。

意味をつかめても、好きとは限らない

友人に見せた回答が、自分の予想ほどウケなかった。「ここが面白いんだよ」と説明すると、「意味はわかる」と返ってきた。説明を続けるほど、相手との距離が開く。

こういうとき、何が共有できていなかったのでしょう。元ネタでしょうか。言葉の意味でしょうか。それとも、わかる・わからないとは別のところで、好みが分かれたのでしょうか。 この記事では、笑いの違いを人の優劣に結びつけず、受け取り方の違いとして眺めます。

説明用の創作例

この会議、議事録を取っている人だけが、話が進んでいないことに気づいている。

会議に参加した経験があれば、場面を想像しやすいかもしれません。それでも、「あるある」と笑う人、嫌な仕事を思い出す人、説明的で驚きがないと感じる人がいるでしょう。 読み手の反応を整理するために、本記事では三つの問いを分けます。

問い確かめたいこと読み手の言葉の例
何を言っているか、つかめたか言葉・元ネタ・状況の理解「会議が進まない話だよね」
その見方を、楽しいと感じたか好み・共感・距離感「わかるけど、自分にはつらい」
どんな反応になったか笑い・微笑み・沈黙・投票「好きだけど、声を出しては笑わなかった」

脳内で必ず順番に起きる三段階を示した図ではありません。会話の中の「伝わらなかった」という一語を、少し細かくするための整理です。

題材だけでなく、構造にも好みがある

「動物のネタが好き」「職場の話が苦手」といった題材の好みは、比較的話しやすいものです。 一方で、同じ動物の話でも、きれいに意味がつながるものと、不条理を残すものとでは、楽しみ方が違います。

HofmannとRuch(2017)は、134人を対象に、ジョーク・漫画・テレビ広告のユーモア評価を調べました。 内容だけでなく、不調和解消型やナンセンスといった構造への好みにも注目し、媒体をまたいだ共通性と広告固有の違いを報告しています。

ここから、自分や他人を固定的なタイプに診断することはできません。ただ、「同じネタを理解した人なら、同じくらい面白がるはずだ」という前提を緩める手がかりにはなります。

A

この図書館、延滞すると貸出カードにため息をつかれる。

延滞への非難をカードに担わせるつながりがある
B

この図書館、辞書が寝言に脚注をつけている。

言葉を説明し続ける辞書の、妙な生活が残る

どちらが好きかは、どれだけ理解できたかだけでなく、どんな変さを眺めていたいかにも関係しそうです。

共有知識は、入口にも壁にもなる

あるゲームのプレイヤーにしかわからない一言は、そのゲームを知らない人には届きにくい。一方、事情をよく知る人には、短い言葉で大量の経験を呼び起こすことができます。

そこで「誰でもわかる言葉に直せばよい」とすると、今度は、その場ならではの密度が失われることがあります。広く伝えることと、狭い経験を深く共有することは、違う目標です。

回答を作るときは、まず誰に読んでもらいたいかを考えます。その場で共有されている知識なら省略する。必要な前提が一つだけ足りないなら短く補う。説明が長くなりすぎるなら、別の題材へ移す。 この選択自体が、表現を作る仕事です。

逆に受け手として読むときは、「自分には入口がなかった」と「入口はあったが好みではなかった」を分けてみます。そうすると、相手の好きなものを否定せずに、自分の反応を説明しやすくなります。

一人で読むときと、誰かと笑うとき

笑いの評価は、作品だけを孤立させて見るものでもありません。Platowら(2005)の実験では、録音された笑い声を自分と同じ集団の人たちのものだと思う条件で、 別集団の笑い声や笑い声なしの条件より、笑いの反応と素材の評価が高まりました。

これは「仲間が笑えば、誰でも必ずつられる」という法則ではありません。笑い声の出どころについて与えられた情報を操作した実験であり、現実の友人関係や大喜利の投票を、そのまま説明するものではないからです。

それでも、自分の反応を振り返るときには役立ちます。初めて一人で読んだとき、友人に紹介されたとき、会場が温まっていたとき。 同じ作品への違う反応を、どれか一つだけ本物として選ぶ必要はありません。それぞれに違う条件があります。

「面白くない」の、もう一歩先を話す

好みを話す練習として、好きな回答を三つ選び、それぞれについて「面白い」を使わずに理由を書いてみます。たとえば、こんな書き方ができます。

  • 目に浮かぶ動作が好きだった。
  • 最後の一語で、それまでの意味が変わった。
  • 説明されない部分を想像するのが楽しかった。
  • 自分だけだと思っていた癖を見つけてもらった感じがした。

次に、あまり響かなかった回答についても、同じ粒度で書きます。「元ネタがわからなかった」「意味はつながったが、予想の範囲だった」「表現の強さが気になった」などです。

大切なのは、好みを採点表にしないことです。一度言葉にした理由と、翌日の反応が違ってもかまいません。理由は自分の笑いを説明し尽くすものではなく、話し合うための仮の手がかりです。

多くの人に届く回答を作りたいなら、共有前提を点検する価値があります。同時に、少人数に強く響く表現を好きでいることにも意味があります。全員が同じところで笑うように調整することだけが、上達ではありません。 友人が笑わなかったら、一度だけ「どんなふうに読めた?」と聞く。その答えが自分の狙いと合っていたら、理解不足を直そうとする説明は、そこで終えてよいのかもしれません。

参考文献

  • Jennifer Hofmann & Willibald Ruch, “Humorous TV ads and the 3WD: Evidence for generalizability of humour appreciation across media?” (2017), 論文ページ
  • Michael J. Platow ほか, “‘It’s not funny if they’re laughing’: Self-categorization, social influence, and responses to canned laughter” (2005), DOI

読み手を固定的な性格タイプに分類するための研究ではありません。本記事の三つの問いは、反応を一語でまとめないための編集上の整理です。