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RESOLUTION, AND WHAT STAYS UNSOLVED

論考 · 約8分

意味がわからないのに、なぜ笑える?

「意味がわからないのに笑える」を、説明不足の失敗と決めない。解消されるズレと残るズレを比べ、おかしな世界に入るための手がかりを探します。

つながって終わる笑い、つながっても残る笑い

閉館後の図書館。人が帰ったあと、辞書だけが寝言に脚注をつけている。

そんな光景を思い浮かべて、少しおかしいと感じる人もいるでしょう。けれど、なぜ辞書が眠るのか、声に出した言葉にどう脚注をつけるのかは、説明されていません。 説明が足りないから失敗した、と決めてよいのでしょうか。

笑いには、わからなかったことがわかる楽しさがあります。同時に、わからないところを残したまま、変な光景としばらく付き合う楽しさもあります。この記事では、後者を考えます。

説明用の創作例

この図書館、静かにするよう注意してくるのが、全部しゃべる本なんです。

本がしゃべるという異常さはありますが、「注意する側がいちばんうるさい」という筋は読めます。図書館の静けさと、注意する本の行動がぶつかり、矛盾の場所が見えてくる。 意味のつながりを見つけることが楽しさの中心になりそうです。

一方、冒頭の「寝言に脚注をつける辞書」は、読める部分と読めない部分が同居しています。辞書が言葉に詳しいこと、脚注が補足をすることはわかる。それでも、眠っている本の生活までは解決しません。

この違いは、研究でも区別されてきました。Samsonら(2009)は、ズレをおおむね解消できる漫画と、解消されないズレが残るナンセンスな漫画を比較しています。 研究で扱う解消は、現実に起こり得るかどうかだけではなく、情報を読み直してどれだけ関係がつかめるかに関わります。 したがって、架空の出来事ならすべてナンセンス、という分け方にもなりません。しゃべる本の話でも、オチの論理がはっきりしていることはあります。

「意味不明」を一つの箱に入れない

同じ「閉館後の図書館」というお題でも、答えの読まれ方には違いがあります。

創作回答読むための手がかり残っている不思議
注意する本が、いちばん大きな声でしゃべっている静かにすべき場所、注意する側の矛盾なぜ本がしゃべるのか
辞書だけが、寝言に脚注をつけている言葉を説明する辞書、補足する脚注本の睡眠、寝言への脚注
黄緑の七が、概念を左折しているこの一文だけでは、図書館との関係を見つけにくい場所・主体・動作の関係そのもの

面白さの順位表ではありません。最後の文も、前後の物語や言い方によっては機能します。単独の回答として置いたときに、読者がどこから読み始められるかを並べたものです。

「全部わかる」と「何もわからない」の間には、広い領域があります。一部がわかるから、残りの変さを楽しめる。 ナンセンスを観察するときは、未解決の部分だけでなく、残されている手がかりを見るとよさそうです。

おかしな世界に入る、小さな入口

ここからは研究の分類をそのまま使ったものではなく、創作を読むための編集上の整理です。入口として、次の三つを探してみます。

動作が見える

「宇宙的な不条理がある」より、「辞書が眠っている」のほうが、ひとまず一場面を想像できます。原因はわからなくても、何が起きているかは追えます。

普段の癖が残っている

辞書が眠っても、説明はやめない。引っ越してきた月が、町内会費だけは払う。一つの馴染みある習慣が残ると、読者はそこを足場にできます。

言葉の調子がそろう

とんでもないことを、事務的な口調で最後まで報告する。現実の因果とは別に、語り方の一貫性が世界を支えることがあります。

三つがそろえば笑える、という公式ではありません。自分の回答を読んで「変なものを足しただけかもしれない」と感じたときに、何を入口として残したかを確かめるための見方です。

「わかった」と「面白い」は、別々に測れる

Daiら(2017)は、不調和を解消する言語的ユーモア、不条理なユーモア、中立的な文章を用い、理解しやすさ・驚き・面白さを分けて評定しました。 その実験では、面白さの評定は解消型、不条理型、中立の順でしたが、理解しやすさの条件間差は有意ではありませんでした。

これは特定の参加者と刺激を用いた結果です。「不条理より、説明できる笑いのほうが優れている」という序列にはできません。 むしろ、理解のしやすさと面白さを、一つの物差しにまとめないことが役立ちます。

誰かが自分の回答に笑わなかったときも、「理解できなかった」とは限りません。光景は浮かんだが好みではなかった、変さより不快さを感じた、別の回答のほうが好きだった。解釈には複数の可能性があります。

変さを足す前に、一つだけ残す

練習として、最初に普通の場面を書いてみます。

ふつうの場面

閉館後、図書館員が本を棚に戻している。

次に、主体だけを変えます。

一か所だけ変えた場面

閉館後、本が図書館員を棚に戻している。

ここでは「片づける」という動作と図書館の関係は残っています。さらに変えるなら、何を残し、何を壊すかを選びます。 主体も場所も動作も同時に変えると、どの変更が効いたのかわかりにくくなります。

  1. 1

    読者が最初につかめる物・動作・口調はあるか——一場面として想像できる足場が残っているかを見ます。

  2. 2

    解けない部分を、眺めていたいものとして置けているか——説明不足に見えるか、変さとして楽しめるかの差です。

二つ目には客観的な正解がありません。自分が好きな変さを残す判断も必要です。すべてを納得できる話に直すことだけが、回答の磨き方ではないのです。

参考文献

  • Andrea C. Samson, Christian F. Hempelmann, Oswald Huber & Stefan Zysset, “Neural substrates of incongruity-resolution and nonsense humor” (2009), DOI
  • Ru H. Dai ほか, “To Resolve or Not To Resolve, that Is the Question: The Dual-Path Model of Incongruity Resolution and Absurd Verbal Humor by fMRI” (2017), DOI

いずれも、用意された漫画・文章への反応を調べた研究です。本記事の創作例や練習法を直接検証したものではありません。