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SPOKEN LAUGHS, WRITTEN LAUGHS

実践 · 約9分

声なら笑える、文字でも笑える?——大喜利の答えを別の形へ運ぶ

同じ答えを、声に出すと面白いのに、書くと何か足りない。反対に、文字では面白かった一言が、読み上げると通り過ぎてしまう。声と文字がそれぞれ何を伝えているのか、同じ発想を使って比べます。

声も、答えの一部になっている

大喜利の回答を文字起こししたとき、紙に残るのは、主に「何と言ったか」です。でも、会場では「誰の声として言ったか」「どこを強めたか」「何を言いかけてやめたか」も届いています。

お題勇者をやめた人が、面接で言ったこと。

回答「御社のためなら、村を一つ」

「御社のためなら」までは感じよく言い、続きも同じ営業用の笑顔で言う。すると、本人は立派な貢献を申し出ているつもりなのに、聞き手には物騒に聞こえる、という読み方を支えられます。

一方、「村を一つ」のところで声を落とし、言ってはいけない経歴が漏れたように言うこともできます。この場合には、自分でもまずいと気づいている人物が現れます。

同じ文でも、二つは同じ演出ではありません。声が、人物の自覚について情報を足しているからです。「読み方で取った笑い」を、文章の外に付いた飾りと考えると、この違いを見落とします。

この記事のお題・回答・演出例は、すべて説明用の創作です。比較は表現を検討するためのもので、効果を測定した実験ではありません。

文字に移すなら、足りなくなった手がかりを探す

先ほどの回答は、文字だけでも物騒さを読めます。ただ、無邪気な売り込みなのか、うっかり口を滑らせたのかは定まりません。そこを定めたいなら、必要な手がかりを言葉に移します。

立派な実績だと思っている

文字での回答案

「御社のためなら、村を一つ。二つでも構いません」
面接用に言い直そうとする

文字での回答案

「村を三つほど……いえ、三つの地域で課題を解決しました」

ここでしているのは、声の特徴を全部説明することではありません。「明るく、少し誇らしげに、面接官の顔を見て」と足す代わりに、人物の選ぶ言葉へ置き換えています。

もちろん、説明文があっても構いません。「採用されたあとの話として、村を焼く相談を始める」のように、外から描いたほうが伝わる発想もあります。声で出した形をそのまま保存することより、笑いの中心にある食い違いが残るかを確かめます。

文字だけが見せられるものもある

今度は、文字のほうに仕事をしてもらいます。

お題この勇者、履歴書で損をしている。なぜ?

回答志望動機「世界平和」/希望勤務地「世界征服」

二つの欄を並べることで、本人の中では両立しているらしい目標が見えます。読者は右を読み、左へ戻り、矛盾を確認することもできます。

これを口頭で伝えるなら、「志望動機は世界平和。希望勤務地は、世界征服」のように、欄の名前まで含めて読みます。文字では配置が担っていた関係を、声では順序と言葉で作り直すわけです。

誤字、漢字の選び方、括弧、取り消し線なども、見えているから成立する場合があります。音が同じでも表記が違う回答を、普通に読み上げるだけで届けるのは難しい。逆に、同じ文字列を違うアクセントで言い分ける笑いは、文字にすると区別が消えることがあります。

文字の読者も、頭の中では声を付けている

「文字で取る笑い」は、口調のない笑いという意味ではありません。

「承知しました」「わかりましたぁ」「はいはい」では、内容が近くても人物の態度は違って見えます。語尾や句読点は、読者が声を想像する手がかりになります。

ただし、作者の頭の中にある声が、そのまま読者に再生されるとは限りません。自分では小声の言い訳として書いた一言が、強い反論として読まれることもあります。そこで、狙った口調で読む前に、一度だけ淡々と読み直します。それでも今回必要な人物や状況がつかめるかを見ます。

狙いと違う読み方ができること自体は、欠点とは限りません。いくつかの読み方が面白さを広げる答えもあります。確認したいのは、曖昧さが働いているのか、必要な情報が抜けているのかです。

一つの答えを、三通りで試す

練習では、同じ発想を次の三つにします。

  1. 1

    文字だけで見せる回答。

  2. 2

    顔や動きを見せず、音声だけで伝える回答。

  3. 3

    ボード、声、表情を組み合わせて伝える回答。

比べるときは、どれが一番ウケたかに加えて、「どの情報が、どこから届いたか」を尋ねます。文字では欄の並びが、音声では言い直しが、ボードでは表情との食い違いが働いているかもしれません。

同じ人に続けて見せれば、二回目以降は答えを知っています。新鮮な反応の比較にはなりませんが、伝わらなかった情報を探す練習には使えます。

声で成立した答えを文字へ移すとき、削るべきものばかりがあるわけではありません。足す必要がある言葉もあります。反対に、文字で説明していた部分を、声の一瞬に任せられることもある。答えの中身と、それを届ける手段を行き来しながら、その発想に合う形を探します。

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本記事は、上記2本と接続する創作上の検討と練習案です。音声と文字の優劣を示す研究結果ではありません。