DESIGNING THE PROMPT
実践 · 約9分
答えたくなるお題は、何が違う?——出題する側の大喜利入門
自由すぎても細かすぎても答えにくい。お題の二つの仕事を分け、試読で何を見て、どの条件から直すのかを整理します。
お題の仕事を、二つに分ける
「何でもいいので、面白いことを言ってください」。自由なのに、どこから考えればよいかわからない。 反対に、登場人物、場所、時刻、使う言葉、文字数まで細かく決まっていると、今度は条件を守るだけで手いっぱいになることがあります。
お題を作るときは、自由か不自由かの二択だけでは足りません。何を共有しておけば答え始めやすく、どこを空けておけば違う答えが出てくるか。その配分を考えます。 「大喜利のお題設計と、6つの発想エンジン」がお題を読んで回答を作る側の整理だとすれば、ここでは出題し、試して、修正する側に立ちます。
練習用の創作お題
急に礼儀正しくなった自動販売機。どんなことをする?
「自動販売機」が、飲み物、硬貨、ボタン、取り出し口などの共通の場面を作ります。「礼儀正しい」が、普段の機械とは違う振る舞いの方向を示します。そのうえで、何をするかは回答者に残しています。
| 仕事 | このお題で担当する言葉 | 回答者に残る余地 |
|---|---|---|
| 同じ場面を思い浮かべる入口 | 自動販売機 | 場所や利用者を追加できる |
| 変える方向を示す手がかり | 礼儀正しくなった | どの動作で礼儀を表すか選べる |
検証されたお題の必要十分条件ではありません。出題文の中で、それぞれの言葉が何をしているかを見るための整理です。お題・回答例はすべて創作です。
制約は、少ないほどよいとは限らない
MoreauとDahl(2005)は、創造的な課題における材料などの制約と時間制約を調べ、強い時間制約がない場合に、材料の制約が創造的な処理を促す結果を報告しています。
また、Damadzicら(2022)のメタ分析は、制約と創造性の関係を111研究から検討しました。全体として正の関係が得られる一方、その大きさは制約の種類だけでなく、研究方法や創造性の測り方などによっても異なりました。
どちらも「大喜利では条件を増やすほどよい」と示す研究ではありません。短い制限時間で答える場と、数日考えられる場でも事情は違います。 お題の条件は、数だけでなく、その条件が発想を助けるのか、単に処理を増やすのかを見て調整します。
同じ題材で、条件を変えてみる
| 出題案 | 考え始めるときの特徴 | 向いていそうな使い方 |
|---|---|---|
| 自動販売機について、何か面白いこと | 回答の方向も形式も自分で決める | 自由な発想を広く見たいとき |
| 急に礼儀正しくなった自動販売機。どんなことをする? | 物と振る舞いの関係から考えられる | 共通の入口から違う答えを集めたいとき |
| 礼儀正しい自動販売機が、売り切れを伝える一言 | 場面が絞られ、セリフで答える | 同じ瞬間の言い方を比べたいとき |
一番下が一番よい、とは限りません。場面を絞れば入りやすくなる人もいる一方、動作や仕組みで答えたかった人の余地は減ります。
出題者が何を楽しみたいのかによって、適した広さは変わります。多様な発想を見たいのか、同じ条件下での言葉の違いを見たいのか。条件を足す前に、遊びの目的を一文にしておきます。
自分の想定解を、隠れた正解にしない
出題者が「おつりを両手で渡す」という答えを思いつき、そこからお題を作ったとします。これは出発点として自然ですが、その答えに近いものしか認めなくなると、回答者は出題者の頭の中を当てることになります。 そこで、公開前に自分でも別方向の案を出してみます。
- 動作おつりを両手で渡す。
- 言葉売り切れのボタンだけ、ずっと謝っている。
- 仕組み取り出し口に、飲み物の退出を見送る係がいる。
これらの面白さの優劣より、違う場所へ考えを動かせるかを確かめます。自分の想定解しか思いつかないなら、お題が狭いのか、自分の発想が固定されているのかを、試読する人と切り分けます。
回答例を先に見せると入口は伝わりますが、考える方向も示してしまいます。初心者向けの練習なら例が役立つこともあります。 独立した多様な回答を集めたいなら、まず例なしで試してみる。目的に合わせて選びます。
試してもらうとき、笑い声だけを見ない
数人に試してもらうときは、回答を出す前に、お題をどう理解したかを確認します。
| 見るところ | 聞き方・観察の例 | 修正の方向 |
|---|---|---|
| 読解 | 「何を答えるお題だと思った?」 | 曖昧な主語や条件を直す |
| 入口 | 「最初にどんな場面を考えた?」 | 題材や状況の手がかりを足す |
| 広がり | 「別方向でもう一案出せそう?」 | 不要な指定を減らす |
| 負担 | 「考える前に調べたい言葉はあった?」 | 専門語や前提を説明する・変える |
「面白い答えが出たか」は大切ですが、それだけを見ていると、お題の理解に時間がかかったのか、発想を練っていたのかがわかりません。
少人数の試行で、公開後の成功を保証することはできません。それでも、主語を取り違える、回答形式が伝わらないといった修正可能な問題は見つけられます。
一度に直すのは、一つの条件
お題を短くし、題材を変え、制限時間も延ばしたら、回答が増えたとしても、どの変更が効いたかはわかりません。 小さく試す段階では、言い方だけ、場面だけ、時間だけと、変更を分けると振り返りやすくなります。
前の版を知っている人は、その経験も持ち込みます。違う人に試す場合にも、参加者の経験差があります。 厳密な実験でない限り、少し良くなった結果を普遍的な法則にせず、次の版への手がかりとして扱います。保存するメモは、次の程度で十分です。
- お題の版
- 今回、変えた条件
- 回答前に迷われたところ
- 出てきた答えの方向
- 次に残す条件・外す条件
お題は、出題者の面白い発想を見せるだけのものではありません。回答者が自分の発想を持ち込める余地も作ります。 よい答えが出たとき、「その答えは想定していなかった」と言える余地を残しておきたいものです。
参考文献
- C. Page Moreau & Darren W. Dahl, “Designing the Solution: The Impact of Constraints on Consumers’ Creativity” (2005), DOI
- Adam Damadzic, Christopher Winchester, Kelsey E. Medeiros & Jennifer A. Griffith, “[Re]thinking outside the box: A meta-analysis of constraints and creative performance” (2022), DOI
お題の二つの仕事、試読の表、修正手順は、本記事による実践上の提案です。大喜利のお題を対象に検証された手順ではありません。