ROUND 1 · BY THE NUMBERS
実践 · 約17分
第1回 総評——データが語る傾向と、採用・高得票の回答
お笑い帝国大学 第1期第1回、5問・37万件の回答データを分析し、見えてきた傾向を言語化しました。生配信で「秀」に採用された回答と、投票で多くの票を集めた回答を紹介し、優 と 良 を分けている定員のしくみも数字で確かめます。
この回の規模
お笑い帝国大学 第1期 第1回は、2025年11月1日から12月6日までの35.1日間、5問が同時に開いていました。 回答数に上限が無い回はこの期でこの回だけで(第2回以降は1問あたり10件が上限)、その分だけ数字も大きくなっています。 実施回そのもののページはこちら、以下はそこからの抜粋です。
372,533件
5問合計の回答数。参加者52,510名で割ると、1人あたり7.09件の計算になります。
86,225票
投票総数。ただし票が入ったのは37,038件(投票あり回答率9.94%)で、9割以上の回答は0票のまま終えています。
51件
生配信で読み上げられ「秀」と評価された回答の数。372,533件のうち0.01%だけです。
| 問 | 回答数 | 参加率 | 投票あり回答率 | 秀の数 |
|---|---|---|---|---|
| 問1 | 66,735件 | 80.13% | 11.99% | 9件 |
| 問2 | 78,377件 | 77.54% | 9.41% | 12件 |
| 問3 | 80,211件 | 76.89% | 8.87% | 12件 |
| 問4 | 91,222件 | 81.24% | 9.58% | 9件 |
| 問5 | 55,988件 | 67.68% | 10.38% | 9件 |
参加率(その回の参加者のうち、その問にも答えた人の割合)は問4が最も高く、問5が最も低くなっています。 5問が同時に公開される形式なので、後半の問ほど答えられにくいという単純な順序効果ではありません (問5より前に置かれた問1〜3のほうがさらに低い回もあります)。
回答の増え方も、初日に一気に来るわけではありません。初日(11月1日)の回答は39,872件(10.7%)に とどまり、もっとも多かったのは2日目(11月2日)の72,352件(19.4%)でした。 3日目までの累計でも41.2%で、残る58.8%は32日間かけてゆっくり積み上がっています。 投稿のピークと、後で見る「票のピーク」は同じ日を指していません。
見えてきた3つの傾向
回答・投票の記録から、数字として言い切れる傾向を3つ挙げます。以下はいずれも「面白さの評価」ではなく、いつ・誰に票が集まったかという、投稿と投票の記録だけから読める事実です。
初日集中
5問それぞれの得票上位15件・計75件のうち65件(86.7%)が、35.1日ある回答期間の初日(11月1日)に投稿されたものでした。回答の投稿数そのものは2日目が ピークなのに、票は初日組に強く残ります。
採用と高得票は別物
5問すべてで、「秀」に採用された回答者と、得票上位15件に入った回答者は1人も重なりません でした。それだけでなく、秀51件のうち39件(76.5%)は1票も入っていません。生配信の評価軸と、読者の投票は、重ならないどころかほぼ無関係に動いています。
主張そのものが票を集めた
「投票の仕組みを見直してほしい」という趣旨の意見表明が、複数の問で得票上位に入りました。 大喜利の答えとしてではなく、共感を呼ぶ訴えとして票が集まった例です。
3つ目について、少し補足します。ユーザー「hiderock」さんは「投票が5票までしか使えないため、 初日に投票を使い切った人が多く、後から出た面白い回答に票が伸びない」という趣旨の文章を、 少なくとも問1・問2・問3の3問に同じ文面で投稿しています。投稿日は11月7日、つまり初日から 6日遅れです。それでも問1では927票を集め、問1の得票数トップになりました。 「パンダみかん」さんも同様の趣旨の文章を問1に投稿し、384票を集めています。 初日集中という1つ目の傾向に対して、「後から投稿しても、訴えの内容次第で票は伸びる」という 例外がある、という読み方ができます。皮肉なのは、この2件が指摘している「後から出た回答は 埋もれる」という主張そのものが、後から出たのに埋もれなかったことです。
優と良を分けたもの
このあと引用の下に「得点10点(優)」と書きますが、この 優 は「何点以上なら 優」という 絶対評価ではありません。評価は定員制で、得票数の多い順(同票なら投稿の 早い順)に並べ、上から何件までが 優 かが決まっています。第1回の5問はいずれも、票が入った回答の上位40%が 優・残り60%が 良、0票は 可 という配分でした。
優 14,809件 / 良 22,217件
5問合計。372,533件に対して 優 は3.98%、良 は5.96%。残る90.05%(335,456件)は0票の 可 です。
良は全件ちょうど1票
良 22,217件の得票は平均1.00票・最大1票。この回の 良 は「1票しか入らなかった回答」とぴったり同義です。
票の74.2%は優に集まる
優 は票が入った回答の40%でしかないのに、86,225票のうち63,993票(74.2%)を占めます。優 の平均は4.32票。
良 が全件1票だということは、1票の回答が 良 で終わっていないことも意味します。同じ1票の回答が 優 と 良 に割れていて、分けているのは票数ではなく投稿の早さです。問ごとに見るとこうなります。
| 問 | 優 | 良 | 1票の回答 | うち優 | 優と良の切れ目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 問1 | 3,200件 | 4,800件 | 6,628件 | 1,827件(27.6%) | 11月2日 19:35 |
| 問2 | 2,948件 | 4,423件 | 6,180件 | 1,754件(28.4%) | 11月2日 22:22 |
| 問3 | 2,844件 | 4,266件 | 6,054件 | 1,787件(29.5%) | 11月3日 0:22 |
| 問4 | 3,495件 | 5,243件 | 7,404件 | 2,161件(29.2%) | 11月2日 23:28 |
| 問5 | 2,322件 | 3,485件 | 4,855件 | 1,369件(28.2%) | 11月2日 20:36 |
問1を例にすると、1票しか入らなかった回答は6,628件あり、そのうち投稿が早かった 1,827件(27.6%)までが 優、残り4,801件は 良 でした。切れ目は11月2日19時35分—— 35.1日ある回答期間の、まだ2日目です。それ以降に投稿して1票だった回答は、残り34日ぶん すべて 良 になります。並べ替えはミリ秒まで見て行われているので、境目は秒単位で引かれています。
裏返すと、優 の過半数は1票の回答です(問1は3,200件中1,827件で57.1%、 問3では62.8%)。「優 だった=票を集めた」ではなく、「1票入って、かつ早かった」が この回の 優 の多数派でした。一方で 優 の中の偏りは極端で、問4の 優 3,495件が集めた 14,656票のうち1,931票(13.2%)は、得票トップの1件だけで持っています。
前節の「初日集中」は、ここにもつながります。票が初日組に残るだけでなく、同じ1票なら早い投稿が 優 に入るという並べ替えの規則が、初日に投稿した人を もう一段押し上げていました。
問ごとの定員と切れ目の時刻は実施回のページの「評価別の投票状況」に 出ています。1票がどう積み上がるかは得票数の読み方で扱っています。
問1
お題(国語)は「次の言葉の対義語を答えよ」。「(1)はんなり (2)宝塚歌劇団 (3)うんこ」という、 対義語のありようがない3つの言葉に、無理やり対になる言葉を返す問題でした (公式ページでお題を確認する)。3つとも律儀に対で返した回答が目立つ一方、 3つまとめて無関係な言葉を並べた回答も多く、答え方は割れていました。
回答66,735件・参加率80.13%・投票あり回答率11.99%(5問中もっとも高い率)
採用された回答(秀)
第1回 問1 秀
はんなり→小京都人バンバンが放つ渾身のギャグ『やめよしぃ〜』 宝塚歌劇団→国際的犯罪組織『スコルテン』 うんこ→超一流財界人が集うクラブ『三巴大合戦セカンドシーズン』
第1回 問1 秀
① 走 ② 攻 ③ 守
第1回 問1 秀(0票)
分かりません 分かりません 全く分かりません
上の3件を並べると、「対で返す」(ヨッチャン)と「無関係な3語で押し切る」(PISOCO)だけでなく、 「答えを拒否する」という3つ目の型があったことも見えます。「分かりません」を3回重ねて最後だけ 「全く」を足す型は、同じ言葉の反復で調子を作り、 最後の一語だけ変えて落とす作りです。降参しているのに得点は9点付いています。
高い票を集めた回答
第1回 問1 高得票
同調される方は、すみませんが一票お願いします。 【面白い回答が埋もれることに対する見解と改善案】 現在までで全ての問題での得票数の高い回答が11月1日と2日に集中している、推測ではあるが、ダウンタウン+入った方の多くが1日2日に集中し、1問一人5票の投票をほぼ使い切ったため、その後の回答への投票が伸びないのだと思う。 また、回答も無制限で出来るため、次から次へと回答が送られ、面白い答えがあってもながされてしまう。 このような状況を良くしたいと思うので以下の提案をしたい。 ①投票は5票から無制限にする。 ②回答は一人一つの問題に対して5つ ③ダウンタウン+のスタッフが面白いと思う回答ピックアップ
第1回 問1 高得票
浜田雅功 浜田雅功 濱田雅功
得票1位と2位が、これほど形の違う回答であることも問1らしい点です。片方は数百字の意見文、 もう片方は3行とも同じ名前の字違いだけ。得票数はどちらも 同じ「1票」の積み重ねでしかないので、この2件を並べても「何が票を集めるか」の一般解は 出てきません。出てくるのは「票の集め方は一つではない」ということだけです。
問2
お題(芸術)は「写真で一言」。泣いている赤ちゃんの横で、父親がスマートフォンから顔を上げずにいる 写真に一言を添える問題でした(公式ページでお題を確認する)。
回答78,377件・参加率77.54%・投票あり回答率9.41%
採用された回答(秀)
第1回 問2 秀
「男 母乳 出し方 無料」
第1回 問2 秀
いつまで待機児童やねん!
第1回 問2 秀(0票)
どうちて現場に血が流れるんでちゅか!
まえかわさんの回答は、写真の中の父親がしていそうな検索語をそのまま書き起こす形です。 写っているものを説明せず、写真の外側にある行動(スマホで何を調べているか)を書き足す組み立てで、写っていないものを足すやり方に近い作りです。 ゆうすけさんの回答は逆に、赤ちゃん本人の視点に立ち、舌足らずな口調(「でちゅか」)で場を実況する 憑依型。同じ写真でも、誰の視点に立つかで答えの形はまったく変わります。
高い票を集めた回答
第1回 問2 高得票
子ども 音量 下げ方
第1回 問2 高得票
ホンマにこんくらいのウンコ出てん!!
得票トップの「子ども 音量 下げ方」も、まえかわさんの秀と同じ「検索語で返す」型です。秀と 高得票の顔ぶれはこの回0人が重なっていますが(前節)、発想の型そのものは問2の中で繰り返し 選ばれていたことになります。同じ型を選んでも、評価される・票が集まるは別の抽選という言い方ができそうです。
問3
お題(数学)は、二次方程式の解の公式「ax²+bx+c=0の場合 x=(−b±√(b²−4ac))/2a になる。」を示した うえで、「ゆえに、」に続く一言を答えよというものでした(公式ページでお題を確認する)。 まじめな数式のすぐあとに脈絡のない一言が来る落差が、この問の笑いどころです。
回答80,211件・参加率76.89%・投票あり回答率8.87%(5問中もっとも低い率)
採用された回答(秀)
第1回 問3 秀
10円のお返しです
第1回 問3 秀
マジである。
第1回 問3 秀(0票)
あの頃の僕達はあれで良かったのである
この問の秀は12件中10件が0票で、5問の中でも特に票が伸びませんでした。「ゆえに、」の続きが 数式と無関係であればあるほど意外性は大きくなりますが、タケさんの「10円のお返しです」のように具体的な場面が一瞬で浮かぶ答えと、ぼけなすさんの 「あの頃の僕達はあれで良かったのである」のように場面を特定しない答えとでは、意外性は同じくらいでも、納得感の質が違います。この問では、場面が具体的な 答えのほうが生配信の評価も得票も伸びやすい傾向がありました。
高い票を集めた回答
第1回 問3 高得票
田中タイキック
第1回 問3 高得票
浜田の不倫は許される
「田中タイキック」は固有名詞と技名を組み合わせただけの2語ですが、数式のあとに置かれることで 「なぜ田中がここで」という空白が生まれ、そこが読み手の想像に委ねられます。 説明を足さないぶん、削ぎ落としの効いた答えです。
問4
お題(保健)は「病院の裏技『ナースコールを10秒長押し』どうなるか答えよ」でした (公式ページでお題を確認する)。
回答91,222件(5問中もっとも多い)・参加率81.24%(5問中もっとも高い)・投票あり回答率9.58%
採用された回答(秀)
第1回 問4 秀
大ナースが現れる
第1回 問4 秀
かっこいいシールをくれる!しかもキラキラの!
第1回 問4 秀(0票)
頭の中に院内の地図が出てきて院長の現在地がうっすら点滅する
問4は秀9件が全件0票という、5問の中でもっとも極端な結果でした。 「10秒長押し」というゲームのコマンド入力めいた行為に対し、「大ナースが現れる」(RPGの 遭遇イベント)、「地図に現在地が表示される」(ゲームのUI)と、複数の秀がゲーム画面の お約束を借りて答えています。生配信の評価はこの発想の飛躍を拾いましたが、投票する読者には あまり刺さらなかったことになります。
高い票を集めた回答
第1回 問4 高得票
ナースオコール
第1回 問4 高得票
隣のジジイのナースコールを取り消すことができる
「ナースオコール」は「ナースコール」を1文字変えただけの空耳ですが、それだけでこの回全体の 最多得票(1,931票)になっています。秀の3件が発想の飛躍で勝負しているのに対し、得票トップは1文字の言い換えという、もっとも小さい変化で成立している対比が、この問の 読みどころです。
問5
お題(国語)は「下のおばあちゃんからの手紙に返事を書きなさい」。「たかし君へ 都会での生活はもう 慣れましたか? お正月に会えるのを楽しみにしています。 畑で採れた野菜を送っておきます。 おばあちゃんより」という手紙への返事を書く問題でした(公式ページでお題を確認する)。
回答55,988件(5問中もっとも少ない)・参加率67.68%(5問中もっとも低い)・投票あり回答率10.38%
採用された回答(秀)
第1回 問5 秀
おばあちゃんへ わかったかし わかったかしより
第1回 問5 秀
おばあちゃんへ まずはお手紙ありがとう。 ただ、今は他に気になるおばあちゃんがいるのでその気持ちには応えられないです。ごめんなさい。 たかしより
第1回 問5 秀(0票)
都会は こうも僕に 厳しい 畑で ゴボウになって ばあちゃんに 引っこ抜かれたい
この回全体で最高得点の「死因」さんの回答は、署名の「たかしより」を「わかったかしより」に 変えるだけで、返事の全文を1語に凝縮しています。短さが そのまま強さになる好例です。一方「さく」さんの回答は、都会暮らしのしんどさを吐露したうえで 「ゴボウになって引っこ抜かれたい」という、つらい感情を いったん比喩(野菜になる)に逃がしてから戻す作りで、票は伸びませんでしたが生配信では 評価されています。
高い票を集めた回答
第1回 問5 高得票
★★☆☆☆ 野菜は美味しかったのですが、梱包が雑だったため星2とさせて頂きました。
第1回 問5 高得票
という手紙だけが届いたので、野菜を送ってください
この2件は、どちらも「たかし」として素直に返事を書いていません。前者はおばあちゃんの手紙を 通販レビューに読み替え、後者は手紙の文面をそのまま「本文」として扱い、野菜だけが届いていない という体で返しています。お題の設定(手紙に返事を書く)を一段外から見ると、 票が伸びやすかったようです。
まとめ
第1回は、この期でただ1回だけ回答数に上限が無かった回でした。37万件を超える回答のうち、 生配信で採用された「秀」はわずか51件、票が1票でも入った回答も37,038件(9.94%)にとどまります。 大半の回答は誰にも読まれないまま回答期間を終えており、採用も高得票も、かなり狭き門であることが数字からわかります。秀に絞っても、76.5%(39件)は1票も入っていません ——「採用されること」と「票を集めること」は、別々に狭き門です。
この回でもっとも高い得点を取ったのは問5の「死因」さん(35点)、もっとも高い得票を集めたのは 問4の「NNKWKE」さん(1,931票)でした。2人の回答は形式も文体もまったく異なり、 「評価される回答」と「票を集める回答」が同じ形をしていないことを、この回の記録だけからも確認できます。 問ごとに見ても、秀は発想の飛躍で選ばれ、高得票は小さな言い換えや検索語のような「借り物」の 言葉で成立する例が目立ちました。どちらが優れているという話ではなく、評価される回路が そもそも2つあると捉えたほうが、この回の記録には合っています。